今回の散策は、新宿区落合にある佐伯祐三と中村彝のアトリエを訪ねてみました。
落合周辺は、大正時代から多くの文化人が住んだ地域で、現在新宿区がゆかりの場所を保存し公開を進めています。
佐伯祐三(1898~1928)のアトリエは、佐伯が大正10年(1921年)に建てた同じ場所に同じ形で、2010年に復元されました。
最寄の駅は、西武新宿線の下落合で、聖母坂通りを10分ほど歩いて行くと聖母病院があり、その裏手に位置しています。右のような細い路地の奥で、佐伯祐三と妻米子の生活が偲ばれます。
元の敷地全体が公園として開放されていて、その中にアトリエが建っています。
近づいてみるとアトリエの瀟洒な佇まいに驚かされます。
実際に佐伯がこのアトリエで制作していた期間は4年余りに過ぎませんでした。佐伯がパリで客死してからは、日本に戻った妻米子が昭和47年(1972年)まで、ここで絵を描きながら暮らしていたそうです。
残念ながら佐伯の絵はありませんが、当時の雰囲気が身近に感じられる貴重な空間です。
新宿区立佐伯祐三アトリエ記念館
新宿区中落合2-4-21
開館時間:10:00~16:00(月曜日休館)
入場無料
佐伯祐三のアトリエから目白駅方面へ15分ほど歩いたところに中村彝(1887~1924)のアトリエがあります。
元のアトリエは、生まれ故郷の水戸市の茨城県立美術館に移築されていて、ここにあるのはイーゼルや家具を含めてそれを復元したものです。
佐伯のアトリエ同様、その立派なことに驚かされます。
大正5年(1916年)に新築し移転してきた彝は、亡くなるまでの8年間をこのアトリエで過ごします。
ほとんど野外で制作した佐伯と違って、病弱だった彝にとっては、このアトリエが制作の世界でした。残された彝の作品を見ると、このアトリエのどのあたりで描いていたのかを想像することができます。代表作である「エロシェンコ像」もこのアトリエで制作されました。
新宿区立中村彝アトリエ記念館
新宿区下落合3-5-7
開館時間:10:00~16:30(月曜日休館)
入場無料
そのほか、佐伯のアトリエから彝のアトリエに向かう間に、浮世絵版画の制作で有名なアダチ工房のギャラリーがあったり、目白駅近くには古楽器専門店のギタルラ社があったりと休日の散策にはとても面白い地域です。