2023年10月23日月曜日

西洋美術館に新たに3点のブーグローが!

いま西洋美術館の常設展の中でおこなわれている「もうひとつの19世紀」展に、新たに3点のブーグロー作品が展示されています。いずれも国内のコレクターから貸し出されたもので、その質の高さに驚かされます。




「もうひとつの19世紀」会場


ブーグロー「姉弟」


部分



ブーグロー「純潔」


部分



ブーグロー「ガブリエル・コットの肖像」


以上の3点に以前からある作品を加えると、8点のブーグローの油絵作品を見ることができます。




また、ボナ、コラン、エンネル、カルロス=デュランなどの作品も展示されていて19世紀のアカデミックな絵画に興味ある方には必見です。

ボナ「肖像画」


コラン 「音楽」「詩」



国立西洋美術館 常設展 「もうひとつの19世紀」
会期:2023年9月19日~2024年2月12日(月・休)
    9:30~17:30(金・土曜日は20:00)
料金:一般500円




2023年10月13日金曜日

街角を描く

今回は都会の街角を描いた作品を紹介します。

風景画と言うと名所旧跡や大自然をテーマにした作品を考えがちですが、身近な場所からでも絵にできる例として見て頂けたらと思います。

いわゆる「匿名の風景」を描く場合は、ただ説明的な描写をするのではなく、何に感動したのかを造形的に考えて表現することが大切です。


作者のEさんが現場で描いたスケッチを見ると、強い日差しがつくった光と影のコントラストと形、ビルと道路がつくる垂直・水平の構図に心惹かれたのではないかと感じました。

教室ではスケッチを基にそれを整理してより強調する形で、キャンバスペーパーにエスキースを作って頂きました。大きさはハガキほどで、構成を考えるには小さいサイズで描いた方が細部に拘らずに進めやすいです。

単色で明暗の組み合わせから始めました。


決まった明暗の配置に従って色を置いていきます。影を青系統の色で、光のあたっている所を黄色系統の色で考え、その間をつなぐ色として緑を配置しました。最後にアクセントカラーとして赤を加えました。



エスキースを基にしてF4号のキャンバスに制作しました。
正方形だったエスキースを横長の長方形の構図を改め、黄金比で分割をおこないました。
また遠近法を使って奥行きを加えました。




完成。

街角の風景」 F4号 キャンバスに油彩


造形上の意図と現実の風景を見た時の実感とのバランスが難しい制作でしたが、そこに絵を描く本質的なおもしろさを感じて頂けたら幸いです。


2023年10月2日月曜日

コレクション:1910年頃に描かれたアカデミックな人体デッサン 

 前回に引き続きアトリエ・ラポルトのコレクションから20世紀初頭にパリの美術学校で描かれた人体デッサンを紹介します。



購入時の説明文によると、Ralston Snow Gibbs(1883-1966)というアメリカ生まれの画家がフランスに渡り、パリの美術学校(Ecole des Beaux-Arts,Paris)で学んでいた1907年から1914年の間に描いたデッサンだそうです。左上に美術学校の印が押されています。


前回紹介した人体デッサンからおよそ100年経ち、描き方が変わっているのが分かります。印象派の影響からか、見た目に自然な表現になっています。



画面いっぱいに人物を入れ、木炭を使ってこすったりハッチングしたりしながら描いています。
日本人が盛んにパリに行って絵を学んだ時期と重なり(安井曽太郎や梅原龍三郎など)、その後の日本における美術学校のデッサンの表現に通じるものを感じます。




しかしよく見てみると、基本的な捉え方は前回紹介した1800年頃のデッサンと共通している点が多いことに気づきます。例えば、
・頭、腕、胴体、足が直線や曲線(S字)でつながり、有機的な構造(コンストラクション)を持っている。
・輪郭線をはっきり残して形を表している。(線で形を表す事を前提としている)
・輪郭線の変化が幾何学的な直線と曲線の組み合わせでできている。
・光が右側から来ているのに、各部位のハイライトを描き手の目の方向に置いてモデリングしている。
・解剖学的に正確な骨格や筋肉を描こうとしている。
などです。


「アカデミックなデッサンとは?」の問いの答えをこれらのデッサンに見る思いがします。