前回に引き続きアトリエ・ラポルトのコレクションから20世紀初頭にパリの美術学校で描かれた人体デッサンを紹介します。
購入時の説明文によると、Ralston Snow Gibbs(1883-1966)というアメリカ生まれの画家がフランスに渡り、パリの美術学校(Ecole des Beaux-Arts,Paris)で学んでいた1907年から1914年の間に描いたデッサンだそうです。左上に美術学校の印が押されています。
前回紹介した人体デッサンからおよそ100年経ち、描き方が変わっているのが分かります。印象派の影響からか、見た目に自然な表現になっています。
画面いっぱいに人物を入れ、木炭を使ってこすったりハッチングしたりしながら描いています。
日本人が盛んにパリに行って絵を学んだ時期と重なり(安井曽太郎や梅原龍三郎など)、その後の日本における美術学校のデッサンの表現に通じるものを感じます。
しかしよく見てみると、基本的な捉え方は前回紹介した1800年頃のデッサンと共通している点が多いことに気づきます。例えば、
・頭、腕、胴体、足が直線や曲線(S字)でつながり、有機的な構造(コンストラクション)を持っている。
・輪郭線をはっきり残して形を表している。(線で形を表す事を前提としている)
・輪郭線の変化が幾何学的な直線と曲線の組み合わせでできている。
・光が右側から来ているのに、各部位のハイライトを描き手の目の方向に置いてモデリングしている。
・解剖学的に正確な骨格や筋肉を描こうとしている。
などです。
「アカデミックなデッサンとは?」の問いの答えをこれらのデッサンに見る思いがします。
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