2012年3月30日金曜日

石膏デッサンを極める

すでに画家として活躍しているHさんは、石膏デッサンを極めようと、ホーマー像にチャレンジしました。


















ホーマー胸像(650×500) 画用紙に鉛筆

約15時間かかって完成しました。途中でモデリングを強く描き過ぎて明部が暗くなったり、反射光を明るく扱い過ぎてボリュームがなくなったりしましたが、最後は完成度の高い素晴らしいに石膏デッサンに仕上がりました。



























背景を描かないデッサンでは、背景となる紙の白よりも、石膏を白く明るく感じさせないといけません。 ここに、現実の引き写しだけでは成り立たない、絵の本質的な問題の一端が表れます。暗い領域で囲まれた中は、外側より明るく感じるという視覚認識の性質や、ハーフトーンやモデリングをよりデリケートに扱うなどの造形的思考が必要となります。写実的な絵と写真との境が曖昧になってしまった昨今ですが、ラファエロやアングルなどのデッサンに代表されるような古典絵画のリアリティの背景には、さなざまな画家の造形上の秘密がかくされています。石膏デッサンは、そのようなことを学ぶにも良い方法だと思います。

2012年3月16日金曜日

油絵の簡単な洗浄方法

古い絵や壁に掛けっぱなしの油絵の簡単な洗浄方法を紹介します。
ただし、くれぐれも注意して頂きたいのは、洗浄したい絵にしっかりとニスが塗られていることが前提条件です。ニスの塗られていない絵に、下記の方法で洗浄すると、汚れが絵具層に浸み込んでしまい取り返しのつかない事態になりかねません。



用意するもの:

洗浄液(精製水に濃度28%のアンモニアを2%加えたもの)
脱脂綿、
細い棒(ここでは編み棒を使用)






















柔らかい刷毛で画面上のほこりを掃った後、綿棒に洗浄液を含ませ(つけ過ぎないように)、目立たない隅の方から慎重に始めます。


綿棒は、円を描くように動かし、脱脂綿が汚れたらすぐに取り換えるようにして下さい。


一ヶ所を時間をかけてしつこく洗うことを避けて、水分を飛ばしながら進めていきます。


















今回使用した洗浄液は、最も弱い洗浄液ですが、それでも稀に絵具がとれる状態の油絵もあるので、汚れの付いた脱脂綿を常にチェックして下さい。 もし絵具の色がついたと思ったらすぐに洗浄を中止します。

また、凸凹したマチエールの絵や、ひびの入った絵は、絵具が脱脂綿に引っかかって取れてしまう恐れがあるので注意が必要です。

















洗浄した部分です。
























洗浄が終わった絵。






ニスを取っていないので黄ばみは残りますが、全体的に明るくなり、細部の色のニュアンスが表れました。

2012年3月2日金曜日

古典絵画をめざして 2

古典技法に憧れて描き始めた静物画も、ようやく彩色の段階に入りました。

 背景の色が決まったら、中央のモチーフから描いていきます。全体的に色を置きながら徐々に仕上げていく方法もありますが、週1回のS君のペースでは、下の層が乾いてしまい、生乾きで溶け込ませながら塗り重ねていく古典技法には不都合なので、部分的に仕上げていく方法を取りました。














使用絵具は、シルバーホワイト、イエローオーカー、レッドオーカー、バーミリオン、ランプブラック、でこれらの絵具は、昔Verdaccio と呼ばれていた(時代によって絵具の種類は多少異なりますが)基本色です。これに状況に合わせて好みの色を加えていきます。
影は、バリュウムイエロー、マダーレーキー、ウルトラマリン、スティルドガランの混色で作ります。













今回は、レモンの鮮やかな黄色をだすためにビスマスイエローを、ぶどうの緑をだすためにヴィリジャンを加えました。