今回は、デッサンからグリザイユと一歩ずつステップを踏んで学ばれてきたK.yさんが、初めて色を使って描いた作品の制作過程を紹介します。
アトリエラポルトでは、グリザイユのようなモノクロームの絵から、対象の色の再現に移る過程として、三原色に基づく限られた絵具による制作を薦めています。鮮やかな対象の色は出せませんが、絵具の混色原理を知り、グリザイユで学んだ明暗法に従った色の調和を得るのに適した方法だからです。
ここでは、黄色にイエローオーカー、赤色にレッドオーカー、青色にウルトラマリンを使いました。明度の調整は、シルバーホワイトとバーントアンバーでおこないます。バーントアンバーは黒の代わりで、理論通り黒絵具を使うと非常にくすんだ絵になりやすいので避けています。
まずは背景から描いていきます。色を似せるというよりも明度を合わせる意識が大切です。
右のようにアトリエラポルトでは、初心者の方には、絵具の塗り重ねによる効果や美しいマチエールを作るといった古典絵画のテクニックよりも、混色原理を説明しながらパレット上で対象の色を作り、直接キャンバスに置いていくダイレクトペインティングの方法を取っています。その方が対象の実感を捉えやすく、上達も早いと思うからです。
周囲の明度と色合いが決まった段階で石膏を描きます。石膏の白さと輝きを出すのが難しいところです。
全体のバランスを考えながら描き込んでいきます。
石膏像のある静物 (P8) |
初めて色を使った油絵としては、まずまずの出来栄えだと思います。やはりデッサンやグリザイユをしっかり学んだ成果が表れています。三原色で描いているので鮮やかな発色の絵ではありませんが、明暗法に従った破綻のない色使いになっています。
ただ部分的には寒暖のモデリングやニュアンスが表われていますが、画面全体から見ると石膏像が冷たくなってしまったのが残念です。次回は構図を決める際に、全体の色彩計画も考えてみると良いでしょう。