2019年12月7日土曜日

アトリエ・ラポルト:作品紹介

今回は、アトリエラポルトで最近制作された作品を紹介します。


・ダヴィデの耳
   キャンソン社製木炭紙(650×500)に木炭
  




制作者のT.hさんは、アトリエラポルトで学ばれて10ヶ月目。初めて木炭を使ったデッサンです。

石膏の白さを保ちながら、細部まで形のボリュームを再現するのに苦労されました。




・グリザイユによる静物
  クレサン社製キャンバス(66番)にシルバーホワイト、アイボリーブラック
  


制作者のN.tさんは、アトリエラポルトでデッサンをゼロから学ばれて2年。初めての油彩画です。最初から完成度の高い作品になりました。



・コーヒーミルのある静物 (F6号)
  クレサン社製キャンバス(66番)に油彩



このブログでも度々作品を紹介しているベテランのK.yさん。現在は、固有色の中の色の変化と、モチーフの置かれている環境におけるリフレクションの効果を研究中です。




・インパラ(P6号)
  クレサン社製キャンバス(66番)に油彩




退職をされてから絵を始めたM.aさん。アトリエラポルトに移ってこられて2年になります。
今回は、教室にあるモチーフの組み合わせでシュールな表現に挑戦しました。




2019年10月18日金曜日

本の紹介 「19世紀ローマ賞絵画」 松濤美術館図録



今回紹介する本は、今から30年前(1989年10月)に渋谷の松濤美術館で開催された「19世紀ローマ賞絵画」の図録です。

フランスのアカデミックな絵画や教育が、どのようなものであったかを知る上での貴重な資料です。


 近代の絵画の歴史は、このようなアカデミズムに対する反発や否定から生まれた為に、今では美術学校の倉庫にしまわれている作品群です。
特に日本では、西洋絵画の受容がその時期と重なった為に、ほとんど知られること(見ること)がなかったと思います。

しかしそれは3世紀にわたり西洋絵画の基礎を形作っていたものであり、西洋絵画を理解する上で欠かせない文化遺産とも言えるでしょう。



この図録の価値は、単にローマ賞受賞作品を並べただけではなく、当時のローマ賞を頂点とした教育システムが詳しく解説されている点にあります。







その内容は、この展覧会からさかのぼること3年前(1986年)にパリの美術学校から出版された全4巻におよぶ「LES CONCOURS DES PRIX DE ROME」の中からの抜粋翻訳です。








余談になりますが、この文献には1797年から1863年までのすべてのローマ賞受賞作品とそのエスキース、それらに関する資料と論文が載っています。
その学術的なレベルの高さに驚くばかりです。













松濤美術館の図録では、その中から63点の受賞作が載せられています。

ピエール・ナルシス・ゲラン「小カトーの死」1797年

ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル
「アガメムノンの使いを迎えるアキレウス」1801年

左:ポール・ボードリー「アラクス川岸で牧人達に発見されるゼノビア」1850年
右:ウイリアム・ブーグロー「アラクス川岸で牧人達に発見されるゼノビア」1850年

ジャン・シャルル・ジョゼフ・レモン「プルトンに連れ去られるプロセルピナ」1821年
*歴史的風景画がローマ賞に加えられたのは1817年からです

写実的絵画がブームのようになっている今の日本ですが、その拠り所がデジタル写真やパソコンではなく、このような絵画に向かった時に、はじめて西洋と同じ視点から写実絵画について考えれるのではないかと思っています。



2019年9月28日土曜日

2次元の模写から3次元のサイトサイズへ

今回は、デッサンの模写の方法から石膏デッサンへのつなげ方の一例を紹介します。



デッサンの模写の方法にもいろいろありますが、アトリエラポルトでは、テキストと画用紙を並べて、平行移動するようにして写す方法を薦めています。








まず、画用紙に中軸を引き、平行定規付き製図板を使って、眉毛、目、鼻、口などの縦方向のプロポーションを移動します。










続いて、縦比から額や目や鼻の幅を割り出して主要なアクセントを決めていきます。







アクセントを目印にフリーハンドで線で形を描いた後、ハッチングで陰影(モデリング)をつけます。


このプロセスは次に見るように、サイトサイズ法と基本的に同じです。




ただしサイトサイズでは平行定規の代わりに紐を使います。

中軸を決めて主要なアクセントを平行移動します。


続いて横比を取っていきますが、立体でしかもモチーフまでの距離があるので、平面のテキストの時のように厳密に測ることはできませんが、目測だけに頼るよりもはるかに早く正確にデッサンが描けるようになります。
模写は洋の東西を問わず、古くからおこなわれている絵の練習方法です。
ただ、2次元平面の模写と3次元の立体(モデル)を見て描くのとでは、技術的な難度に大きな差があります。
(例えば、写真をトレースしてリアルに描くことはできても、現実のモデルさんを見て描くのは難しいように。)
そのギャップを埋め合わせる教育過程の1つになればと考えています。




2019年9月22日日曜日

ハッチングの方法を学ぶ

今回は、ハッチングを使ったデッサンの練習方法を紹介します。


ハッチング(hatching)とは、元は「細かい平行線を引く」という意味の英語で、絵の上ではモデリングや影などを表すのに用いる技法です。

鉛筆やコンテによるデッサン、銅版画やテンペラ画の制作によく使われます。

右は、ディデロとダランベールが編纂した世界最初の百科事典(1751~1772刊行)からのものですが、銅版画の制作におけるハッチングの方法が示されています。


受講生のT.Hさんは、そのハッチングの効果と美しさに魅かれて、19世紀のリトグラフを模写しました。










原画は、ラファエロの油彩による「カルヴォリアの丘への道」の部分を、19世紀に絵手本用にリトグラフにしたものです。

当時の画学生は、このような版画を模写することが課題の1つだったようです。
模写の方法にはいろいろありますが、ここではサイトサイズ法と同じように、画用紙とテキストを横に並べて、平行移動するように写していきました。


線で形を捉えた後に、鉛筆によるハッチングで影をつけていきます。始めは、一方方向からのハッチングで明部と暗部に大きく分けてから、次第に形態のボリュームに沿ったクロスハッチングで仕上げていきます。



テキストにしている版画では、見事な職人技のハッチングで陰影がつけられています。



模写(410×280)画用紙に鉛筆


約10時間かけて模写しました。
鉛筆とリトグラフのインクでは、黒さに違いあるので模写は若干明るく見えますが、丁寧にハッチングを観察して再現しています。

描画材料にはさまざまな種類がありますが、基本はそれぞれの材質や目的に合った使い方をすることです。
例えば、今回使用した鉛筆は、文字や図面など線を描くのに適した画材です。ハッチングはその目的に合った技法と言えるでしょう。

また、ハッチングの方向性よる効果を学ぶことは、油彩画における筆触の効果を知る上でも役に立ちます。





2019年8月27日火曜日

全身の石膏像

今回は、アトリエラポルトで購入した全身の石膏像を紹介します。

日本では石膏デッサンが美大受験の課題として広まったせいか、石膏像と言うと胸像か首像ほとんどで、全身像を描く機会はあまりありません。




ラファエル・コラン作(60.6×46.2)
パリ国立美術学校所蔵
*余談ですが右上に評価が「C」と記されてます。
当時のレベルの高さを感じます




ところが、パリの美術学校に残されている19世紀の石膏デッサンの多くは全身像(おそらく等身大の像)を描いたものです。



















作者不明(1880年代)610×410
(アトリエラポルト所蔵)

人体が、デッサン教育の中心だった当時を考えると、生のモデルを描く前段階として、全身の石膏像を描くのは理にかなった過程だと思います。

アトリエラポルトでもこれに倣って、全身の石膏像を新たに購入して「人物デッサン講習会」の練習として使ってます。














デェオニソス像(高さ64㎝)・堀石膏製
原型はポンペイで発見されたローマ時代の作品























ファルコネ作ヴィーナス像(高さ85㎝)・堀石膏製
原型はロココ時代(18世紀)のフランスの彫刻家ファルコネの作品






















サタイア像(高さ62㎝)・堀石膏製
原型は古代ギリシャのヘレニズム期の作品をローマ時代に模刻したもの





















これらの像は、それぞれの作者と各時代の美の規範に従って、理想化された人体の形に作られています。現実のモデルさんとは異なる点も多々ありますが、その分個々の形が明瞭で解剖学的にも理解しやすく、ポーズ時間を気にすることなく美しい人体の形を学ぶことができます。
できれば、等身大の石膏像が欲しいところですが、日本では種類が少ない上に教室の狭いスペースでは設置できないのが残念です。

*参考文献:「石膏像図鑑」 脇本壮二著
      「石膏デッサンの100年」 荒木慎也著 



2019年8月2日金曜日

風景スケッチから作品へ

今回は風景画の制作方法の一例を紹介します。

写生に基づいた風景画は、できれば現場ですべて仕上げるのが理想です。
しかし現実には天気の変化や太陽光の移動により、良い条件で制作できるのはせいぜい1日2~3時間位です。大きめの作品になると、何日も滞在して現場に通わなければなりません。

そこで昔からよく行われてきた方法に、現場で小さいサイズのスケッチをして、それをもとにアトリエで再構成しながら大きな絵を仕上げる「ペイザージュ・コンポーゼ( Paysage Composé)」があります。コロー(Jean‐Baptiste Camille Corot 1796~1875)の作品などにその良い例を見ることができます。
今回の制作者のY.Kさんには、この方法を応用して描いて頂きました。

取材場所は長野県安曇野で、田植え前の水をはった「鏡田」がテーマです。

現場での油彩スケッチでは、主に遠近に即した明暗と色合いの変化を捉えること、そして何よりその「実感」を記憶に留めるつもりで描くことが大切です。





半日で1枚のペースで4~5枚の油彩スケッチを描いた中から、教室で制作出来そうな作品を選びました。










P15号のキャンバスに、構図や明暗の組み合わせを考えながらスケッチを再構成します。

特に、雄大な風景の奥行きを表すには大気遠近法の理論が役に立ちます。

参考文献
Valenciennes:Elements de perspective pratique.
L.Cloquet:Perspective pittoresque.











細かい形や描き込みは、写真で補いながら制作しました。

















常にスケッチから現場を思い起こして描き進めていくことが大切です。

















安曇野 P15号 キャンバスに油彩



約25時間かけて完成となりました。
教室での制作時間が長くなるほど写真に引きずられがちになりましたが、現場でのスケッチが「写真の模写」になるのを防いで、目で見た印象に近い「実感」のある風景画になったと思います。

ただスケッチが風景全体を捉える事を優先した為に、テーマの「鏡田」が取材不足で苦労されました。

このような経験を繰り返して、自分なりの制作スタイルを確立していって頂ければと思います。






2019年7月12日金曜日

日曜人物デッサン講習会

 受講生を対象に、毎週日曜日の午前中に裸婦を中心とする人物デッサン講習会を始めました。

人物デッサン、とりわけ裸婦デッサンというと、日本ではクロッキーを指すことが多いと思いますが、西洋の過去の文献やそれに準じたクラシカルドローイングをおこなっている現在の欧米の美術学校を見てみると、固定ポーズでかなりの時間をかけて制作しているのが分かります。
アトリエラポルトでもこれに倣って、固定ポーズで最低でも6時間(20分ポーズ×18回)かけて1枚のデッサンを描くようにしています。



また照明も一方向から当て、はっきりとした光と影で、形や空間を捉えやすくしています。

人物画はモデルが動くので難しく、写真を使って描く方が多いと思いますが、本来の人物デッサンは、動くモデルさんから最も美しい形やコンストラクションを捜し出して、再構築しながら描いていくものです。そこに単なる引き写しではないデッサンの本質的な課題があります。
昔の西洋の美術学校で、解剖学や遠近法や明暗法などの知識を徹底的に教えた理由が分かります



限られた条件のもとですが、アトリエラポルトは少しでもそこに近づけるように受講生と共に研鑽していきたいと考えています。