今回は新しく購入した石膏像、ロダン作「ヴィクトル・ユゴー胸像」を描いたデッサンを紹介します。
作者はアトリエラポルトで学ばれて1年のCGクリエーターKさんです。
原型は、1880年頃に粘土で作った像をブロンズで鋳造してものです。
多くの石膏像が理想化された形態で美しく作られている中で、この像は現実の人物に則して作られています。生のモデルさんに近い感覚で描けるのではないかと購入しました。
ところが白い石膏像にすると指の跡がよくわかって、ロダンの息遣いを感じさせるのは良いのですが、デッサンをするにはやっかいな痕跡です。
最初は髪の毛や髭など複雑な形も、線とその強弱だけで表すようにアドバイスしました。
陰影を付けることで形が曖昧になることを避けるためです。
影の分量の少ないライティングで、形のモデリングと前後関係に徹底的にこだわって制作を進めました。背景を描かないデッサンでは、石膏の白さを保ちながら明部をモデリングするのは大変デリケートな作業になります。5H以上の硬い鉛筆も必要です。
ロダン作「ヴィクトル・ユゴー胸像」(650×500) 画用紙に鉛筆 |
約35時間かけて仕上げました。石膏の白さを保ちながら細部の形のボリュームまでよく描き込んだデッサンになりました。現実の石膏像は、周囲からの反射や背景とのコントラストによる錯覚で、そのまま引き写すと形が曖昧になったり、二次元の平面ではボリュームが出ない箇所がいくつもあります。Kさんは、じっくり時間をかけて解剖学や西洋の美術学校のデッサンを参考にしながらそれらの解決を試み、結果として大変質の高い石膏デッサンになったと思います。