今回選ばれたのはキューピットの全身像で、石膏デッサンの定番と言えるものです。作者や制作年代は不明のようですが、セザンヌがモチーフにしたことで有名です。
エクス=アン=プロバンスにあるセザンヌのアトリエには、今でもその石膏像が残されています。
頭から左足までの弓なりの曲線的つながりと、前に伸ばした右足から頭にかけての直線的な構造線のコントラストが美しい像です。セザンヌが好んだのも分かるような気がします。
セザンヌ 「キューピットのある静物」 1895年頃 |
始めは線だけで描いていきます。
この段階では細部の形に拘らず頭から足までの大きなムーブマンとプロポーションを的確に捉えることが大切です。
全体の形が取れたら、現実の陰影を利用しながら個々の形をモデリングします。
特に初心者の方には頻繁にデッサンと石膏像を並べて置いて、離れた位置から見比べるようにアドバイスをしています。
一見すると可愛らしさだけに目が惹かれるキューピットですが、細部を描き込んみると、驚くほど解剖学的に正確に造形されているのに気がつきます。それをデリケートな明度差のモデリングで表すのがとても難しいところです。
キューピットの石膏像 鉛筆 (530×410) |
約15時間で描き上がりました。
アトリエラポルトでの4枚目のデッサンですが、回を重ねるごとに形の捉え方やモデリングが的確になってきています。それと同時に正確な人体の形の把握には、解剖学の知識が必要なことも分かって頂けたかと思います。
「見る事」と「頭で理解する事」との双方からデッサンを学ばれるのが上達への近道です。