2021年5月22日土曜日

エコルシェを描く

今回はエコルシェの石膏像を描いたデッサンを紹介します。


エコルシェ(Écorche)とは、直訳では「剥ぐ」という意味で、美術用語では人体の皮膚を取り除いて筋肉を表した像を指します。

人体の形を解剖学から学ぶために作られ、昔の西洋の美術学校には必ずあった像です。その代表的なものが彫刻家ウードン(Jean-Antoine Houdon.1741-1828)が作ったエコルシェです。(右写真)

残念ながら日本では入手困難です。




現在日本で購入できるエコルシェの石膏像は、クードロン(jacques Eugene Caudron.1818-1865)制作の2体と作者不明の小型の像1体だけです。アトリエラポルトでは、クードロンの2体を所有しています。








今回その内の1体にチャレンジしたのは、香港からの留学生A君です。




この石膏像は、筋肉の形を学ぶ以前に全体のプロポーションを捉えるのが大変難しい像です。


時間をかけて何度も測り直しをしながら全身の形を決めた後、個々の筋肉を描きこんでいきました。








石膏像としての白さを保ちながらモデリングする(ボリュームをつける)ことが大切です。




エコルシェ(650×500)画用紙に鉛筆


粘り強く解剖学の本と照らし合わせながら制作を進められて、完成度の高いエコルシェの石膏デッサンになりました。エコルシェを描く目的は言うまでもなく、人体の筋肉や骨などの形やつきかたを覚えることで、表面的な陰影の変化を描くことではありません。それにはかなりの制作時間と忍耐が必要ですが、確実に解剖学的認識を高める方法です。



2021年5月12日水曜日

横浜本牧絵画館:トロンプルイユの現在

 今回は、横浜本牧絵画館で開催されている「トロンプルイユの現在」展(2021年4月17日~7月19日)を紹介します。

横浜本牧絵画館は、トロンプルイユの技法を駆使して自己の絵画世界を表出した画家、岩田栄吉(1929~1982)の作品を中心に展示している美術館です。



毎年さまざまな企画展を開催するとともに、公募による作家・研究者支援プログラムなどのユニークな活動をおこなっていることでも知られています。


「トロンプルイユの現在」展は、岩田栄吉ゆかりの作家と、トロンプルイユの方法で制作されている新進気鋭の作家の作品を展示しています。

出品作家:岩田栄吉、伊牟田経正、城戸義郎、鳥越一穂、小林聡一、池田誠史、中原未央、山本大也









岩田栄吉

岩田栄吉

伊牟田経正

アトリエラポルトも、ご支援頂いてる作家さんや収蔵作品の貸し出しでご縁を頂きました。

それぞれの作家の油絵の技法とリアリティの追求の結果を見ることができる展示内容になっています。是非ご覧頂きたい展覧会です。

横浜本牧絵画館:神奈川県横浜市中区本牧元町40-7 ℡045-629-1150

開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)(休館日火曜日)

入館料:500円


余談ですが、美術館の近くには国の名勝に指定されている三渓園があります。こちらの方もご覧になることをお勧めします。




2021年5月1日土曜日

キューピットの石膏像


今回はキューピットの石膏デッサンを紹介します。


制作者は、アトリエラポルトでデッサンを始められて約半年のOさんです。








このキューピットの石膏像は、セザンヌがモチーフにしていたことでよく知られています。

セザンヌ「キューピットのある静物」1895年

アトリエラポルトでも定番の石膏像です。



キューピットは全長47㎝の小型の立像ですが、よく観察すると解剖学的に非常に正確に造形されているのが分かります。それを現実の光と影を利用しながら再現していくようにアドバイスしました。



「キューピット」画用紙に鉛筆(530×450)





約12時間かけて仕上がりました。その前の石膏デッサン(下のフレンチ少女)が30時間以上かかったのに比べると、描き方が分かって早くなったようです。形もモデリングもより正確になってます。
ただ細部を描き進めると影の中の反射光を見過ぎて(明るくし過ぎて)ボリュームが損なわれる傾向があるので注意が必要です。
全体のプロポーションと直線的構造は良く捉えられていますが、これにキューピット像の特徴である曲線的なつながりが加わるともっと良くなることでしょう。

「フレンチ少女」画用紙に木炭(530×450)