非常に宗教臭い作品なので敬遠される方もいるかと思いますが、19世紀後半のフランスアカデミー絵画を代表する作品のひとつです。
「ヨブ」石版画(500×380)制作年不明 |
ド・ラ・パヌーズ子爵夫人の肖像 西洋美術館蔵 |
現在、故郷のバイヨンヌにボナが集めた美術コレクションを基にして設立された美術館(Musee Bonnat)があります。
2015年に上野の西洋美術館でも肖像画を購入、展示されるようになりました。
筆者がボナの絵を初めて知ったのは、学生時代に使っていたアーノルド・モローの美術解剖学の本の中からです。
その解説の中でモローは、
「19世紀後半のフランスアカデミーの大家レオン・ボナによるこのヨブ像は、解剖学的に極めて正確な骨格・筋肉・血管によって、痩せた老人を表現している。」
と書いています。
石版画(lithograph)は19世紀に生まれ、その制作のしやすさで急速に普及します。
ドーミエやロートレックが好んで使用した方法です。
アトリエラポルト所蔵のこの石版画は、ボナの原画を驚嘆する技術で忠実に再現しています。モローの解説通りのデッサンの正確さを余すところなく伝えています。
このような表現は、ただ漠然とモデルを見て描いても不可能で、美術解剖学の深い知識の必要性を感じさせてくれます。