2012年6月29日金曜日

模写から絵を始めて 1

アングル作「グラネ氏の肖像」の模写


Sさんは模写から絵を始めた、ちょっと変わった経歴の持ち主です。


以前に通われていた飯田達夫氏の教室で、アングルの模写を学ばれ、その技法を応用して、当アトリエで静物画を描いてます。

















アングルなどの古典絵画は、何と言ってもデッサンが重要です。画家は、油絵の制作に入る前に、デッサンを繰り返し描き、形態や構成を熟考します。フランスのモントーバンにあるアングル美術館には、そのようなデッサンが厖大な量残されています。



Sさんにも、まずは中間色の紙に、チャコール鉛筆と白コンテ鉛筆で、入念にデッサンしてもらいました。









対象を見ながらデッサンするのは、初めてだったそうですが、時間をかけて、修正を繰り返しながら、完成度の高いデッサンに仕上がりました。

2012年6月22日金曜日

HARUZO油絵具




友人に、春蔵絵具の長崎社長を紹介して戴いたのが、昨年の10月。 その後、何度かお会いして話を伺っているうちに、教室のあるビルの1階のお店(さとうストア)で、HRUZOU油絵具を販売することになりました。













全部で123色ある内から、基本色に長崎社長お奨めの色を加えた53色を、定価の2割引で販売しています。
















教室のスタッフや受講生の方々にとっても、HZRUZO絵具は初めての体験。その優れた特性や使用感など、これからこのブログで、レポートしていきたいと思います。

2012年6月20日水曜日

バラを描く 1


 バラ園をされているKさんは、教室でも花をテーマに絵を描き続けています。今回は、ちょっと大き目の絵に挑戦です。その制作過程を追っていきます。





 遠近法の枠を使って、できるだけ正確にデッサンをします。


















 遠近法の枠を使う時のコツは、対象のアクセントの位置を、点でキャンバス上に取り、その間をフリーハンドで結ぶようにすることです。すべての輪郭を、枠の升目で追っていこうとすると、大変な時間がかかる上、かえって狂いやすくなります。

















 鉛筆デッサンができたら、薄く溶いたテールドカッセルで、デッサンをなぞって定着させ、明暗を付けていきます。





 影の形や面積、その位置関係は、絵を構成する上で、とても重要です。ただ対象の影を付けるのではなく、影を含めた暗い形を、抽象的にどのように配置するべきかという見方が必要です。この段階で、時間をかけてよく考えながら明暗を付けていくように勧めました。

2012年6月13日水曜日

裸婦デッサン研究会


 教室の授業とは別に、画家仲間が集まって、毎週土曜日の夕方「裸婦デッサン研究会」を催しています。
































 照明や背景などのセッティングは、19世紀のフランスの美術学校のアトリエを参考にしています。




















 そのために、照明器具やモデル台などを自作しました。















 気心の知れた仲間と、綺麗なモデルさんを囲んで描くのは、本当に楽しい時間です。終わった後の「一杯」も格別です。

2012年6月1日金曜日

本の紹介 5

「絵画の技法」 ジャン・リュデル著  黒江光彦訳  白水社(文庫クセジュ765 ) 1995年


左:フランス語版(第9版)   右:日本語版
原本は、「Jean Rudel, Techique de la penture」で、1950年の出版以来10回以上の版を重ねる、フランスで最もポピュラーな絵画技法入門書です。


余談ですが、クセジュ文庫(Collection QUE SAIS-JE?)は、フランスの岩波文庫のような存在で、他にも絵画関係では、遠近法・デッサン・美術史・美学など良い本が沢山あります。











絵の技術を広い視点から捉えて書かれたもので、直接的に絵の描き方を説明した技法書ではありません。

しかし、日本の美術教育の中では、あまり語られることのない内容が詰まった本です。例えば、右のような「画面の構成」の意義や「色彩の問題」についても、簡潔に分かりやすく説明されています。







フランス人のリュデルの技術上の考え方は、以前に紹介したラングレの「油彩画の技術」に繋がるものがあります。読み比べてみることをお奨めします。巻末の参考文献も詳しく、研究者の手助けになると思います。 ただ、これだけ内容のある本を書いた著者ジャン・リュデルについての紹介が少なく、訳者の略歴や翻訳経緯ばかりが目立つのは気になります。訳者は、あくまでも黒衣に徹するべきではないでしょうか?