前回では、グリザイユ画法によって、現実のリアルな再現には、対象を明暗(Valeur)で把握することが大切なことに触れました。その練習のためにも、グリザイユはとても有効な手段ですが、今回は、それを応用した作品作りの例を紹介します。
Yさんの今回のテーマは、イタリアのアルベロベッロの風景です。ご自身で撮ってこられた白黒写真からの制作です。
そこでお勧めしたのは、南イタリアの青い空をイメージして、最初に青だけで描いてみる(語弊にはなると思いますが)青色のグリザイユです。
使った絵具は、セルリアンブルー、コバルトブルー、ウルトラマリン、ランプブラック、シルバーホワイト、です。
セルリアンブルーを暖かめの青、コバルトブルーとウルトラマリンを冷ための青として扱い、ランプブラックを鮮やかさの調整に加えました。
同系色だけでも、寒暖のニュアンス入ると、とても色彩が豊かに感じられ、光の輝きも表現できます。
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M8号 アルベロベッロの小道 |
最後に、レッドオーカー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジなどの反対色に、ヴィリジャンやイエローオーカーなども加えて、対象の固有色を表すと共に、寒暖のニュアンスの強調を図りました。
現実の色の再現をした絵ではありませんが、絵の中で色は美しく調和し、作者の象徴的なイメージの世界が伝わってきます。色による表現を考える上での、参考になればと思います。