2019年9月28日土曜日

2次元の模写から3次元のサイトサイズへ

今回は、デッサンの模写の方法から石膏デッサンへのつなげ方の一例を紹介します。



デッサンの模写の方法にもいろいろありますが、アトリエラポルトでは、テキストと画用紙を並べて、平行移動するようにして写す方法を薦めています。








まず、画用紙に中軸を引き、平行定規付き製図板を使って、眉毛、目、鼻、口などの縦方向のプロポーションを移動します。










続いて、縦比から額や目や鼻の幅を割り出して主要なアクセントを決めていきます。







アクセントを目印にフリーハンドで線で形を描いた後、ハッチングで陰影(モデリング)をつけます。


このプロセスは次に見るように、サイトサイズ法と基本的に同じです。




ただしサイトサイズでは平行定規の代わりに紐を使います。

中軸を決めて主要なアクセントを平行移動します。


続いて横比を取っていきますが、立体でしかもモチーフまでの距離があるので、平面のテキストの時のように厳密に測ることはできませんが、目測だけに頼るよりもはるかに早く正確にデッサンが描けるようになります。
模写は洋の東西を問わず、古くからおこなわれている絵の練習方法です。
ただ、2次元平面の模写と3次元の立体(モデル)を見て描くのとでは、技術的な難度に大きな差があります。
(例えば、写真をトレースしてリアルに描くことはできても、現実のモデルさんを見て描くのは難しいように。)
そのギャップを埋め合わせる教育過程の1つになればと考えています。




2019年9月22日日曜日

ハッチングの方法を学ぶ

今回は、ハッチングを使ったデッサンの練習方法を紹介します。


ハッチング(hatching)とは、元は「細かい平行線を引く」という意味の英語で、絵の上ではモデリングや影などを表すのに用いる技法です。

鉛筆やコンテによるデッサン、銅版画やテンペラ画の制作によく使われます。

右は、ディデロとダランベールが編纂した世界最初の百科事典(1751~1772刊行)からのものですが、銅版画の制作におけるハッチングの方法が示されています。


受講生のT.Hさんは、そのハッチングの効果と美しさに魅かれて、19世紀のリトグラフを模写しました。










原画は、ラファエロの油彩による「カルヴォリアの丘への道」の部分を、19世紀に絵手本用にリトグラフにしたものです。

当時の画学生は、このような版画を模写することが課題の1つだったようです。
模写の方法にはいろいろありますが、ここではサイトサイズ法と同じように、画用紙とテキストを横に並べて、平行移動するように写していきました。


線で形を捉えた後に、鉛筆によるハッチングで影をつけていきます。始めは、一方方向からのハッチングで明部と暗部に大きく分けてから、次第に形態のボリュームに沿ったクロスハッチングで仕上げていきます。



テキストにしている版画では、見事な職人技のハッチングで陰影がつけられています。



模写(410×280)画用紙に鉛筆


約10時間かけて模写しました。
鉛筆とリトグラフのインクでは、黒さに違いあるので模写は若干明るく見えますが、丁寧にハッチングを観察して再現しています。

描画材料にはさまざまな種類がありますが、基本はそれぞれの材質や目的に合った使い方をすることです。
例えば、今回使用した鉛筆は、文字や図面など線を描くのに適した画材です。ハッチングはその目的に合った技法と言えるでしょう。

また、ハッチングの方向性よる効果を学ぶことは、油彩画における筆触の効果を知る上でも役に立ちます。