2024年6月10日月曜日

サテュロス全身像のデッサン

 今回は難度の高いサテュロスの全身像の石膏デッサンに挑戦したCさんの制作過程を紹介します。


サテュロス(またはサタイヤ)は、ギリシャ神話に登場する半人半獣の精霊で豊穣と欲情の化身として表現されます。オリジナルの彫像はギリシャ時代のヘレニズム期のものと考えられていますが現存していません。忠実なローマ時代のコピーとされるものがウフィツィ美術館にあります。

アトリエ・ラポルトで購入したサテュロス像の製作者「石膏像ドットコム」の脇本氏によると、この石膏像の型取りの元になったのは、1704年にフィレンツェの彫刻家であったマッシミリアーノ・ソルダーニ・ベンツィ(Massimiliano Soldani Benzi 1656-1740)が作ったブロンズ像の縮小複製とのことです。
Wikimedia commonsより


制作するにあたって、像の中央に天井からひもをおろして垂直軸を設定し、それを基準にプロポーションを測っていきました。


プロポーションを線だけで捉えた後、個々の形態をモデリングしてボリュームをつけていきました。


画面全体のバランスを考えテーブルに貝を加えてみました。




完成。


石膏像内の影の分量を少なくして、モデリングによって形態を追求したデッサンになりました。このようなデッサンは19世紀のパリの美術学校でおこなわれていたやり方で、現象的な陰影を再現しようとしたデッサンとは異なり、解剖学の知識に裏打ちされた形態の把握にデリケートなハーフトーンをコントロールしながらのモデリングといった高度な技術を必要とします。これまでのCさんのデッサンへの粘り強い取り組みの成果が出た作品になったと思います。







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