2023年4月24日月曜日

アンクタン→マロジェ→アヴェル→ラングレ その1

 今回は、20日からギャラリー・エスパル・ラポルトで始まった「奥深い洋画材の世界」の展示作品から、20世紀フランスの絵画技法研究の流れを考察します。


 展示されているこの絵の作者が画家・修復家・技法研究家・教育者のジャック・マロジェ(Jacques Maroger.1884-1962)です。マロジェはルーベンスを中心に15世紀から17世紀のオールドマスターの失われた技法の研究に生涯を捧げました。その成果は20世紀の絵画技法の発展に大きな足跡を残しました。



 マロジェは1930年から第二次世界大戦の始まった1939年まで、ルーブル美術館のテクニカル・ディレクターという要職にありました。その間ラウル・デュフィの代表作となる壁画「電気の精」の制作を技法面でサポートしました。その透明感のある輝くようなマチエールはマロジェの考えたメデュームによるものです。 



 戦争の激化に伴いアメリカに移住したマロジェは、1948年に「The Secret Formulas and Techniques of the Masters」を出版し、失われた15世紀から17世紀の絵画技法を推論します。この本は同時代の画家とその後の絵画技法研究に大きな影響を与えました。

“The secret formulas and techniques of masters"
フランス語版


そのマロジェが若かりし頃に技法研究のきっかけを作ったのがルイ・アンクタン(Louis Anquetin.1861-1932)です。アンクタンについては次回に続きます。


2023年4月18日火曜日

奥深い洋画材の世界

 今回もギャラリーエスパスラポルトで20日から開催される展覧会を紹介します。

 洋画材の世界には、宝石のような美しい色や独特の質感を持つ素材が数多く存在します。今回の展示では、画家で画材の研究家としても知られる松川氏と鳥越氏の珍しい画材コレクションを展示します。展示の中心となるのはラピスラズリや鉛白、コチニールなど天然鉱物や植物の染料など様々な素材を使った画材です。

 また、鳥越氏と松川氏の作品展示や銅板に描く油絵の実演も予定しています。さらにアトリエラポルトの佐藤コレクションの中から、20世紀の代表的な技法研究家として大きな足跡を残したジャック・マロジェの絵と著書、それに関連する文献を展示します。

 加えて、実際にラピスラズリから天然のウルトラマリンを作るワークショップも開催いたします。鳥越氏・松川氏の在廊中は、画材や技法などの質問にも答えます。

 さらに、春蔵絵具協賛による画材販売と掘り出し物コーナーもありますので、ぜひお立ち寄りください。


『奥深い洋画材の世界』
会期:2023年4月20日~5月13日 10:00~18:00
   *会期中は無休
場所:ギャラリー・エスパス・ラポルト
    東京都中央区日本橋小伝馬町17-9  さとうビル1階
ワークショップ:天然ウルトラマリンの抽出
        4月22日・23日 14:00~
        参加費 3,000円
        問い合わせ 080-3637-6633


2023年4月4日火曜日

石膏デッサン展

 今回は4月3日からギャラリー・エスパス・ラポルトで始まった「石膏デッサン展」を紹介します。



石膏デッサンは古くから美術教育の基礎的な方法として用いられてきました。石膏像の多くは、ギリシャ・ローマ時代の彫刻から型取りされたもので、ルネサンスから19世紀までの代表的な彫刻も加わります。そこには単にデッサンの技術の習得以外に、古典主義の美意識を学ぶ目的も含んでいました。そのため現代では石膏デッサンに否定的な意見も多く見られますが、アトリエラポルトでは、逆に西洋のデッサンや絵画の本質を探究する手段として重視しています。今回の展示でその成果をご覧頂けると思います。

さらに、シャルル・バルクのオリジナルプレートによる貴重なリトグラフも展示しています。西洋のアカデミックなデッサンについて考える機会になれば幸いです。



2023年3月16日木曜日

暖色と寒色について

 今回は現在ギャラリーエスパスラポルトで開催されているグリザイユ展から、暖色と寒色について考えてみましょう。

「エッ、グリザイユに色があるの?」と思われるかもしれませんが、ここでの暖色・寒色とは、同一色相上の暖かい・冷たいといったニュアンスのことを指します。例えば、赤でも紫に寄った赤は冷たく、オレンジに寄った赤は暖かく感じます。同様にグレーも、アイボリーブラックを使ったグレーは暖かく、ピーチブラックやランプブラックで作ったグレーは冷たく感じます。この違いを利用して、光のあたっている所は暖かいグレー、影は冷たいグレーというように使い分けることで、より豊かなボリュームと奥行き、そして光の輝きを表わすことができます。

次の2点の作品は、1点がシルバーホワイトとアイボリーブラックだけで、もう1点がアイボリーブラックにブルーブラックを加えて描いたものです。



使用絵具:アイボリーブラック、シルバーホワイト

使用絵具:アイボリーブラック、ブルーブラック、シルバーホワイト

画像では分かりにくいですが、寒暖を使い分けた方がより輝きのあるグリザイユになっていると思います。


次のグラデーションは、シルバーホワイトにレッドオーカーとコバルトブルーの混色によってできるグレーの変化を表しています。


このグレーを使って描いた作品が、下の面冠女神胸像です。より寒暖のニュアンスの豊かなグリザイユになっています。

面冠女神胸像(P15号)
使用絵具:レッドオーカー、コバルトブルー、シルバーホワイト




展示の中には、寒暖のニュアンスを使ったグリザイユを応用したエチュードもあります。



このような明暗と色についての考え方は、古典絵画から印象派に至る色使いのベースとなったものです。ギャラリー・エスパス・ラポルトで実際にご覧頂けたら幸いです。

グリザイユ展
3月24日まで(延長)8:00~19:00
休廊日:土曜・日曜・祝日
ギャラリー・エスパス・ラポルト
東京都中央区日本橋小伝馬町17-9(さとうビル1階)





2023年3月3日金曜日

動画:「立ちポーズを描く」2

 動画 「立ちポーズを描く」の2回目をYouTubeにアップしました。

今回は油彩編ですが、着彩に入ってから再びデッサンに戻ったりしています。
現実のモデルさんを見ながら制作すると常に新たな発見や気づきがあるものです。そうした制作過程の様子をそのまま動画にしてみました。ご覧頂ければ幸いです。




2023年3月1日水曜日

グリザイユ展

 今回は27日からギャラリー・エスパス・ラポルトで始まった「グリザイユ展」をご案内します。
一般的にグリザイユ(Grisaille)は古典的油絵制作の工程の1つと考えられていますが、アトリエラポルトではデッサンの延長線上として授業に取り入れています。
現実の空間の再現には明暗(Value)を的確に捉えることが必要です。油絵具はそれに最適な画材であると共に、初心者の方が油絵に慣れて頂くためにもグリザイユは良い練習方法です。
「グリザイユ展」では、アトリエラポルトの受講生がいろいろな方法で描いたグリザイユ作品を展示しています。絵の表現における明暗(Value)の重要性と「美しさ」を考えるヒントになれば幸いです。




グリザイユ展 (モノクロームのエチュード)
会期:2023年2月27日〜3月17日 (8:00〜19:00)   
休廊日:土曜・日曜
場所:ギャラリー・エスパス・ラポルト
   東京都中央区日本橋小伝馬町17-9 さとうビル1階
   TEL:03-6661-0370    
 



2023年2月3日金曜日

固有色の明度を追わないデッサン

 今回はアトリエラポルトの講師が描いたデッサンのプロセスを紹介します。

西洋のアカデミックなデッサンの教則本を調べてみると、デッサンは正確な形を表現する事が重視されていて、対象固有の明度を再現する事はしていないのがほとんどです。
アトリエラポルトでもそれに倣って、基礎のデッサンではモチーフの固有色の明度は追わないで線とi陰影だけでボリュームと前後関係を表すようにしています。
例えば今回のモチーフのセットは次のようなものです。


これをどうデッサンとして仕上げていったかご覧ください。








実際のブドウは暗い紫色ですし、デコポンやクルミにも固有の明度があります。しかしデッサンの練習には固有色の明度を省いた方が形に専念できる上に、背景の白い紙に対して明るさを保ちながらデッサンを仕上げることができます。デッサンを学ばれる方の参考にして頂ければ幸いです。