今回の本の紹介は、今年(2017年)の6月に青幻舎より翻訳出版された、アントワーヌ・バルジーニ著「アーティストのための形態学ノート」です。
原本は、2016年にフランスで出版された
“Le corps à nu. Antoine Barjini" です。
著者のバルジーニは、現在パリ国立高等装飾美術学校の講師を務め、従来の美術解剖学とは異なる形態学の視点から、観察に基づく人体デッサンの実践的方法を試みています。
美術解剖学を学んでも実際にモデルを前にすると、その知識が役に立たない事がよくあります。それは、男女の違いや体形の違いで骨や筋肉の現れ方が異なるからです。
バルジーニの斬新な試みは、個々の人体の表面の形(形態学)からその理由を論理的に説明している点です。
例えば右の写真は、体形の違いを脊椎のS字カーブの違いによる骨盤の傾きから説明しています。
本文は8つのレッスンからなっています。
Ⅰ.人体の特徴
Ⅱ.プロポーション
Ⅲ.骨盤
Ⅳ.下肢
Ⅴ.胴
Ⅵ.上肢
Ⅶ.背中・脊椎・首
Ⅷ.頭部
右のページはその中の「Ⅳ.下肢」の部分です。実例にあげたピカソの絵は、写実的な表現ではありませんが、4本の下肢の内側面と外側面の違いが、それぞれの角度から見事に描きだしていると説明しています。
「良い形とは何か?」「正確なデッサンとは何か?」を考える上での参考になると思います。
この写真は「Ⅵ.上肢」からで、体表の目印を示したものです。男女による表れ方の違いがよく分かります。従来の美術解剖学では理解し難かったところです。
肩の筋肉と上腕の説明では、表層の見えから筋肉の状態を解説しています。
このようなアプローチの仕方は、特にモデルを見て描く時には確かに実践的で理解し易い方法だと思います。参考図版や写真も美しく、読み物としても面白くできてます。人物を描く方にはお勧めの一冊です。
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