今回のアトリエラポルトのコレクションは、19世紀におそらくローマ賞コンクールに関連して描かれたと考えられる油彩エスキース(下絵)を紹介します。
|
「トゥッルスの家のコリオラン」 作者不明(320×250) |
大きさは4号ほどで、テーマはローマ時代の英雄コリオランの物語の一場面を描いたものです。
古くから画家の登竜門として知られるローマ賞コンクール(フランス)の資料を調べると、1827年にフランソワ・グザビエ・デュプレ(Francois-Xavier Dupre)が同じテーマで受賞しています。
この時の受験生のデッサンの中に同じような構図を見ることができます。
ローマ賞の最終審査は油彩による歴史画で行われてきましたが、そこに至るまでにデッサンから油彩エスキースの過程を踏まえることが義務付けられていました。今でもパリの美術学校には膨大な量のデッサンと油彩エスキースが残されています。
日本では西洋画の受容が印象派から始まった為に、このように構想をデッサンにし、油彩エスキースでより具体的な表現へと高めていく教育方法が、ほとんどおこなわれてこなかったと思います。
アトリエラポルト所蔵の油彩エスキースは、昔日のアカデミックな美術教育の名残を伝えてくれています。
余談になりますが、このエスキースは過去に修復を受けています。
釘で打たれたキャンバスは裏打ちのもので、その上に目の細かいオリジナルのキャンバスを貼り付けています。画面のひびの状態から、巻いて保存されていたのかもしれません。
木枠もその時のものだと推測できますが、現代の木枠と作りが違うのがよく分かります。
画材を考える上でも貴重な資料になっています。
0 件のコメント:
コメントを投稿