2022年3月11日金曜日

色相環を作る

 今回は、アトリエラポルトで薦めている色相環の制作を紹介します。


色相環は虹色のスペクトルの順番に絵具を円形に配置したものです。色相環の制作は色の体系的な理解にとても役に立つ方法です。

現在日本では、マンセルの色相環に基づいたもの(PCCSなど)が主流で、それにオストワルトやイッテンの色相環が加わるかと思いますが、アトリエラポルトでは、それらとは別の絵画史に大きな影響を与えた2種類の色相環の制作をおこなってます。

1つは、シュヴルール(Michel-Eugene Cheveul. 1786~1889)の考えた色相環で、絵具の三原色(赤・黄・青)を正三角形に配置してます。それぞれ隣り合う色どうしを混色して間の色相を作ります。減法混色になるので間の色相は鈍くなりますが、絵具を混色して絵を描く画家の立場からすると実用的で分かりやすい色相環です。現在では直径線上が正確な補色にならないなど科学的に不都合な点から使われなくなりましたが、発表された当時は色の対比効果を明確に表しドラクロワや印象派の画家たちに大きな影響を与えました。

アトリエラポルトでは、油絵を学ぶ最初の段階で三原色をベースに描くことをおこなってますが、その時にとても役立つ色相環です。



シュヴルールによる「Cercle chromatique harmonique」
E.FER : Solfege Solfege de la couleurより


もう1つは、ルード(Ogden Nicholas Rood,1831~1902)のもので、光のスペクトルに最も近い絵具を並べた色相環です。直径線上が補色となり、垂直線を境に右側が寒色、左側が暖色となるように配置されています。光は加法混色になるので中心が白色光となり白が置かれています。現在一般的に使われているマンセルの色の三属性では、白を加えると彩度が落ちることになりますが、ルードでは白色光に近づくと考えます。印象派の画家達がスペクトルに近い絵具を使い、大量に白を加えて絵がハイトーンになった理由が理解できます。



ルードによる「Cercle chromatique scientifique」
E.FER : Solfege Solfege de la couleurより


ルードの色相環は、特にスーラやシニャックなどの新印象派の画家に影響を与えました。
このパレットはスーラのもので、色相環と同じように絵具が置かれていることがわかります。


このように絵画の歴史の中で色相環を考えると、絵の見方も深まり、感覚に頼りがちな色の表現に客観的な拠り所が見つかるのではないかと思います。


0 件のコメント:

コメントを投稿