2018年10月23日火曜日

日曜日 開講

皆様のご要望にお応えして、10月28日から日曜午後の部を開講いたします。
日曜日の昼下がりのひと時を、アトリエラポルトで本格的に絵を学んでみませんか?






2018年11月からの開講日は下記のようになります。

午前の部:10:00~12:30  金・土
 
午後の部:13:30~16:00  水・木・金・土・日

夜の部: 19:00~21:30  金

*祝日はお休み

受講料:チケット制で10回券 32,400円
登録料:5,400円(初回のみ)
*詳しくはホームページをご覧ください。




2018年10月12日金曜日

額の簡易な補修


公募展などに毎年出品されている方は、取り付けた額が傷んで戻ってきた経験があると思います。

今回は、右の写真のように、額の一部が欠けた時の簡易な補修方法を紹介します。










まずは、欠損部分をパテで再生する必要がありますが、そこでお勧めなのが木工用のエポキシパテです。

接着力が強い上に、速乾性(約30分で硬化)で乾燥によるパテの体積の変化も起こりません。乾燥後は、彫刻刀や紙やすりで削れます。




二層からなる円筒形のパテを、使う分だけカッターで切り取ります。

それを指でよく練って混ぜ合わせると硬化が始まります。
(注:エポキシパテは、皮膚につくとかぶれる場合があるので、保護手袋すること)





10分以内に欠損箇所にパテを押し付けます。
その後30分ほどで固くなりますが、その間にへらや彫刻刀を使ってオリジナルのレリーフに近くなるように成形します。











固まってからは、紙やすりなどを使って仕上げます。














今回は黒縁なので、色合わせにはアクリルガッシュを使いました。

アクリルガッシュは、乾くとマットになりますが、艶のない状態からニスやワックスなどを使ってオリジナルの光沢に合わせます。






黒の額ですが、下地にベンガラ色(ここではバーントシェンナを使用)を塗っておくと深みのある黒になります。












乾いてから黒(アイボリーブラック)を塗ります。













オリジナルがそれほど強い光沢がないので、今回はウールで磨いて艶を合わせました。









完成。

オリジナルと比べると荒い作りですが、簡易な補修としてはこの程度で十分です。
100号の額なので、ほとんど気にならないと思います。














2018年9月22日土曜日

石膏デッサンから一歩ずつ

今回は、アトリエラポルトでデッサンを学ばれて10か月が過ぎたM.tさんの作品を紹介します。

M.tさんは、それまで絵を学ばれた経験はなく、仕事が休みの日に毎週来られて、焦らず急がずコツコツとデッサンを続けられています。

次の7枚のデッサンは、いずれも画用紙に鉛筆で描いたもので、制作順に並べてあります。






幾何形体 420×350

果物と野菜 420×350

ダビデの口 330×240

うつむき坊や 410×320

へべ半面 410×320

青年ブルータス 530×460

メジチ胸像 530×460



木炭の腹を使って黒々と迫力満点に描かれた石膏デッサンとは対極的なデッサンですが、デッサン本来の目的である「存在する形を描く」という見方からは、どの作品も愚直なほど丁寧に描かれています。

このような「現象的な形の印象」ではなく、形を遠近法に従って正確に再現することを目的とした石膏デッサンは、19世紀にフランスで使われていた絵手本の中に見ることができます。

M.tさんのデッサンには、まだ構造的な見方や的確なボリュームの表現が足りませんが、西洋のクラシカルな方法に近いデッサンになっていると思います。



参考画像

A.Cassagne (1874年頃)
"Le dessin pour tour”より



B.-R.Julien (1860年)

2018年9月7日金曜日

三原色から始める

 今回は始めて色を使った油絵にチャレンジした、Y.mさんの制作過程を紹介します。

アトリエラポルトでは、色を使った油絵の練習過程として、最初に三原色だけで描く方法を勧めています。







使用絵具:
イエローオーカ―
レッドオーカ―
コバルトブルー(またはウルトラマリン)
シルバーホワイト
バーントアンバー(理論上は黒ですが、ニュアンスの乏しい鈍い絵になりやすいので、バーントアンバーを使っています。)

鮮やかな色の再現はできませんが、その分、リアルな表現のベースとなる形と明暗(valeur)が捉えやすく、色彩の破たんが起こり難くなります。
また、絵具の混色原理を体感することができるでしょう。






木炭でデッサンをした後、バーントアンバーで定着して彩色に入りました。

最も面積の広い背景を決めてから、モチーフを一つずつ仕上げていきました。





実際のモチーフと比べると、洋梨の緑色と桃の赤色の鮮やかさが使用している絵具では出せませんが、そこを隣り合う色との対比や、明部から暗部へのパッサージュや反射光に、色相の変化を加えることで「感じさせる」工夫をすることが大切です。


最後に一番右側のクルミを描いて完成です。

このように一つ一つモチーフを仕上げていく描き方は、生乾きの状態での制作を可能にし、滑らかなモデリングと発色の良い効果が得られます。反面、モチーフ相互の関係や、全体の統一感を失う恐れもあるので注意が必要です。












初めての色を使った油絵とは思えない出来栄えです。グリザイユをじっくりと勉強してきたことによって、色に惑わされることなく明暗が的確に捉えられています。
色の再現も三原色だけの制約の中では、かなり引き出していると言えるでしょう。
ただ、良く見るとデッサンやきわの処理の甘さが気になりだします。今後の課題です。





2018年8月27日月曜日

水辺を描く

今回は、水辺の風景を描いた作品を紹介します。

制作者のM.tさんは、定年後本格的に絵を学ばれた方です。お住まいの近くで取材されてきて、教室で油絵にしました。

水辺の風景は、古くは17世紀のオランダ派のロイスダールやゴイエンが好んで描き、最もポピュラーなところでは、印象派のモネやシスレーを上げることができるでしょう。

Jacob van Ruisdael (1628ー1682)
Jan van Goyen (1596-1656)









Claude Monet (1840-1926)
Alfred Sisley (1839-1899)



技術的な面では、水の透明感や地上の風景の映り込み、そこを照らす太陽光のキラキラした輝きをどう表現するかが課題でしょう。




映り込みは、遠近法に従うと陸地と水面の境に対して、同じサイズで反転するのが原則です。










Valenciennes:Elements de perspective pratiqueより


また、太陽光の輝きを追求した印象派の画家たちは、補色や反対色のタッチを並置して、色収差による「目のちらつき」を利用して表そうとしました。




シスレー:サン=マメスのロワン川より







さて、M.tさんの制作ですが、色彩効果を考えて青色(ウルトラマリンとコバルトブルー)でエボーシュを試みました。

青色は暗くすると彩度が上がるので、感覚的には難しいやり方ですが、上に置かれる固有色と対比されることで色彩的な効果を狙いました。









出だしは、青色が強すぎて苦労されましたが、コツコツ不透明な固有色を塗り重ねていって、次第に現実の印象にちかくなってきました。
















水辺の風景(P10号)

構成感のあるがっちりとした絵になったと思います。
下描きの彩度の高かった青色を抑えるために、暖色を塗り重ねていったせいか、出来上がった絵は、暖かい光を感じる穏やかな色調になりました。
ただその為に、水面の映り込みが暗く重たくなったのが残念です。
現実はもっと透明感のあり、光の反射で輝いていたことでしょう。次の作品のためにも、できれば現場に絵を持って行かれて、見比べてみると良い勉強になると思います。


2018年8月8日水曜日

本の紹介 アルベルティ「絵画論」

左:1977年版 右:2011年改定新版

前回のブログでグリッド(碁盤状の升目)を利用した遠近法に基づくデッサンを紹介しましたが、それに関連して、今回はアルベルティ「絵画論」(三輪福松訳 中央公論美術出版 初版1971年)を取り上げます。原本は1435年にイタリアのフィレンツェで書かれました。




"De la Peinture"
Jean Louis Schefer 訳 Paris 1992

アルベルティ(Leon Battista Alberti,1404-1472)は、まさにルネサンスの人文学者を代表する人物で、その多肢に渡る教養と活動はルネサンス時代の理想像「万能の天才」として伝えられています。

後世に多大な影響を与えた著書も残し、その主なものは現在では日本語訳で読むことができます。
紹介する「絵画論」以外では、次のものがあります。
「建築論」 相川浩訳 
      中央公論美術出版 1982年
「芸術論」 森雅彦訳 
      中央公論美術出版 1992年
「家族論」 池上俊一・徳橋曜 
      講談社  2010年




特に「絵画論」(De pictura)は、ルネサンスに始まる新時代の西洋絵画の方法論を示した記念碑的な著作です。

内容は3巻に分かれています。

第1巻と第2巻は、おもに幾何学的遠近法と絵画の構成要素ついて論述。
第3巻は、技術論を越えて画家と作品はどうあるべきかについて述べています。

その内容についての解説は、その後多くの研究者が試みてますが、ここでは1992年にフランスで出版されたシェフェル訳に載っている作図を見てみます。












実際の作図法についてはここでは触れませんが、このように遠近法が生まれた当初から、グリッドを使った遠近法が考えられていたのが分かります。

グリッドを遠近を測る尺度として使用する方法は、その後「画家の遠近法」として発展し、西洋絵画の中で頻繁に表れます。

ボッティチェリ
ベラスケス








フェルメール

ティントレット















幾何学的遠近法は、単なる空間表現の手段ではなく、西洋の文化と言えるほど重要なものです。アルベルティの「絵画論」はそのさきがけで、西洋絵画を理解する上で欠かせない本です。

アトリエラポルトでは、このような方法論を今のデッサン教育の中に取り入れられないかと、試行錯誤しています。