多色の油絵と言うと、今までもこのブログで紹介してきたように、果物や花や陶器など色鮮やかなモチーフを選ぶ方が多いのですが、K.yさんはあえて白くて明るいモチーフを白い背景で描くことに挑戦しました。
うまくいくととても斬新で現代的な表現になりますが、僅かな明暗差や色合いの変化で空間やボリュームを表さなければならず、大変難しいセッティングです。
シルバーホワイト、チタニュームホワイト、イエローオーカー、カドミウムイエロー、バリュームイエロー、レッドオーカー、カドミウムオレンジ、カドミウムレッド、クリムソンレーキー、ウルトラマリン、ヴリジャアン、バーントアンバー、ローアンバ、アイボリーブラック、ランプブラック
描き始めは、シルバーホワイトとアイボリーブラックに微量のウルトラマリンを加えて寒暖の調整をしながら明暗を追っていきました。
徐々に色を加えていき、固有色を表します。
ここで忘れてはならないのは、グリザイユの時に学んだ寒暖の扱いを色にも応用することです。
例えば貝のクリーム色のような固有色を塗る場合も、ハイライトに向かって暖かく、影に向かって冷たくなるように色相を微妙に変化させることで、より自然な奥行きやボリュームが出るように心がけます。
このようなハイキーの絵は、輝くような明るさ(白さ)が出ないと魅力的な絵にはなりません。
ところが油絵具のシルバーホワイトは意外に被覆力がなく、何層も塗り重ねないと抵抗感があって輝くような白い発色が得られません。
貝と幾何形体 (M10号) |
ゆっくりと焦らずに休みながら約10ヶ月かけて完成しました。
慎重にデッサンの狂いを修正したり、明暗や色合いを調整したりしているうちに、絵具が何層にも重なり、しっかりとしたマチエールと美しい発色の絵になりました。
一見モノクロームの絵のようですが、個々のモチーフの固有色の違いと、光から影への色合いの変化が良く表現されています。(画像では分かりにくいのが残念です)
このような絵は、目を引き付けるようなインパクトはありませんが、部屋に掛けてじっくりと眺めていると、いろいろな色が見えてきて飽きないものです。
とてもユニークな絵ができたと思います。
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