2018年3月5日月曜日

三原色によるエチュード

今回は、初めて油絵具による彩色に挑戦したOさんの制作過程を紹介します。

アトリエラポルトでは、初心者の方には色彩の破綻なく現実空間の再現を学べるように、三原色の混色を基本にした描き方を薦めています。





まずは、キャンバスと同じサイズの画用紙に入念にデッサンします。




出来上がったデッサンをキャンバスに転写して、彩色に移ります。使った絵具は、イエローオーカー・レッドオーカー・コバルトブルーを三原色としてシルバーホワイト・アイボリーブラックで明度と彩度の変化をつけました。

これらの絵具の混色ではモチーフより鈍い色しか出せませんが、その分色の鮮やかさに惑わされずに明度の再現がしやすくなります。彩度の高い色は、実際の明度より明るく感じるため、明暗の置き換えが難しくなります。




このように明度を重視するのは、私たちの空間認識が色よりも圧倒的に明度(Value:英,Valeur:仏)に依存しているためです。リアルな絵を描くには、的確にモチーフの明度を捉えることが最も必要だからです。

明暗関係が決まってきて、色の再現に限界を感じ始めたら、鮮やかな絵具を少しずつ加えていきます。ここでは、カドミウムイエローとカドミウムレッドを足しています。

初心者の油彩画の練習では、細部の描写よりも、モチーフのボリュームや質感、その置かれている空間上の位置関係を正確に表す事の方が大切です。











三原色によるエチュード(F8号)




初めての油彩画で悪戦苦闘されていましたが、デッサンからグリザイユと時間をかけて学ばれてきた成果が表れた作品になりました。

まだまだ明度や彩度の関係など不十分な点が少なからずありますが、次回作の課題として取り組んで頂けたらと思います。





現実空間の再現をベースにした絵は、色と明暗の関係を正しく認識する訓練が必要です。その方法の1つとして、好きな色の絵具を無制限に使って描くのではなく、三原色の最小限度の絵具から始めることは、合理的で分かりやすい学び方だと考えています。





0 件のコメント:

コメントを投稿