今回紹介する本は、アルバート・ボイム著「アカデミーとフランス近代絵画」(三元社2005年)です。原本の初版は1971年となってます。(Albert Boime,The academy and french painting in the nineteenth century.1971)
クラシックな絵をお好きになった方は、そのような絵がどうしたら描けるようになるか知りたくなるのではないでしょうか?
もちろん美術館にあるような絵を描いた画家には、たぐいまれな才能があった訳ですが、その背景にあった厳格な教育システムを抜きにしては、その絵は生まれなかったことは言うまでもありません。
しかし日本は西洋のアカデミックな美術教育が崩れ始めた時期に西洋絵画の受容が始まった為か、西洋の美術教育の歴史と内容を知るための資料が極めて少ないのが現状です。その中でこの本は貴重な存在です。19世紀のフランスの美術学校で行われていた授業内容の詳細がわかります。
第四章 アカデミックなスケッチ
第五章 実践におけるスケッチ
第六章 模写ーアカデミックな模写
第七章 アカデミックな風景画ーその伝統的手法
第八章 アカデミックな「エチュード」ー生成の手法
第九章 スケッチの美学
近代・現代の絵画はこのような教育方法の否定から始まっていると言われますが、20世紀の初頭までは多くの画家が、程度の差こそあれ同様の教育を受けています。
著者のボルムもマネに始まる近代絵画は、その先生であったトマ・クチュール(Thomas Couture 1815~1879)のエスキースやスケッチの影響から生まれたと考えています。20世紀の破壊と革新の世紀を経て、21世紀の今、もう一度アカデミックな美術教育について見直したい方にはお勧めの本です。
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