今回から2回にわたって、線だけで石膏像を描くのにチャレンジしたUさんのデッサンを紹介しながら、デッサンの学び方ついて考えてみたいと思います。
まずは前置きから。
「西洋のデッサンは陰影で描くもの」「日本画の素描は線で描くもの」と思われがちですが、西洋のデッサンの成り立ちを調べてみると、土地や建築の形を規定する幾何学の影響を強く受けているのがわかります。線で正確に形を表す幾何図法は、そのまま絵画のデッサンに応用されてきました。
次の画像は、中世最古の画帖(13世紀)からのものです。作者のヴィラ―ル・ド・オヌクールは、ゴシックの建築家として当時の建築技術を今に伝えています。その画像を見ると、どれも直線と曲線(円弧)の組み合わせで描いているのがわかります。
「ヴィラ―ル・ド・オヌクールの画帖」(13世紀)より |
ルネサンス時代になると遠近法が誕生して現実空間に近い3次元の表現が可能となり、時代が下るに従ってこれに明暗法が加えられ、よりリアルなデッサンになってきます。しかしいつの時代でも、線で正確に形を捉える技術は常に変わらぬ西洋のデッサンの本質です。
それは、「Dessin」の語源が、ラテン語で線を引く意味の「Designare」からきている事からも明らかです。
ラファエル(1483-1520) |
ジロデ(1767-1824) |
アングル(1780-1867) |
ブグロー(1825-1905) |
マネ(1832-1883) |
ピカソ(1881-1973) |
Uさんは、いろいろなオールドマスターのデッサンの中から、特に線だけで描いているものを選んで参考にしました。歴史的には、古典主義の画家はフォルムの美しさを重視して、陰影の少いデッサンを描く傾向があります。自然な印象の再現には反しますが、対象の正確で美しい形を表しているという点では明瞭なデッサンと言えるでしょう。
また20世紀の絵画の平面化(装飾化)やイラストやアニメにも繋がるデッサンだと思います。
さて、Uさんのデッサンがどのようになったかは次回にお伝えします。
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