昭和17年の出版で、戦時中にこのような本が出たのに驚かされます。多分戦争画の需要から、西洋の油絵の技法を、学ぶ必要があったのではないかと思います。
左:フランス語版原本 右:日本語翻訳版 |
モロー・ヴォチエー作 「バラの死」 |
日本語版を原本と比べてみると、翻訳も、レイアウトも、出来るだけ忠実におこなおうとしているのが分かります。
ただ、残念なことに、旧かな使いに旧漢字の文章は読み難く、翻訳単語の意味も正確に説明されていないものがあり、頭を傾げてしまう箇所がいくつもあります。
しかし、翻訳にそのような問題があるにせよ、西洋絵画の技術や考え方を知る上で、貴重な本です。
内容は、先史時代から19世紀までの技法史に始まり、色彩や各種の技法、それらに使う支地体や溶剤や顔料について述べられています。科学的研究の進んだ現在では、疑問に感じる人もいるかもしれませんが、当時の絵を学ぶには大変参考になります。
、
そして、最後に「絵の保存」について、かなりのページを割いているのも、注目すべき点だと思います。日本では、未だに描く側にも、見る側にも、欠けている知識ではないでしょうか?
西洋絵画の奥の深さを感じさせると共に、戦争の直中にあって、この本を手にした画家達が、どのような絵を描いていたのか、考えてみるのも大切な事だと思っています。
0 件のコメント:
コメントを投稿