著者のヨハネス・イッテン(1888~1967)は画家であり進歩的な教育者としてその業績は西洋で高く評価されています。特にバウハウスで行なった色彩と造形に関する授業は伝説的で、その後の美術教育に多大な影響を与えました。
「色彩の芸術」は、その中の色に関する部分をまとめたもので、「造形教育の基礎」(手塚又四郎訳 美術出版社)と共に、日本でも美術教育者(特にデザイン系)にとっての「虎の巻」とも言える存在です。
目次を見ると次のようになっています。
・色彩の物理面
・色彩の実感と色彩効果
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・色彩とデザインの原理
・7種類の色彩対比
・混色
・色立体とカラースケール
・色彩の調和と変化
・形体と色
・色彩の空間効果
・色彩印象の原理
・色彩表現の原理
・コンポジション
内容の一部を紹介しますが、ここで特に注目すべき点はそれぞれの項目の説明に、多くの絵画を例にとって具体的にしているところです。
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写真1は、イッテンの色相環ですが、それに基づいて写真2では15世紀のアヴィニヨン派の画家アンゲランの絵を使って色相対比の説明をしています。
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写真3は、明度対比の項目で、面積や組み合わせについて説明した後、東洋の水墨画やレンブラントの例を挙げています。
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写真5は寒暖対比で、写真6はセザンヌの静物画を例にして説明しています。
写真7は、同時対比の説明で、ゴッホの例(写真8)を取り上げています。
以上のような名画による解説が28例もあり、絵を描かれる方にも大変参考になると思います。
ただ残念なことにすでに絶版で、現在手に入るのは要約版の「ヨハネス・イッテン 色彩論」で、これには絵を例にした解説と図版は載っていません。再版が望まれるところです。
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