今回はアトリエラポルトのコレクションの中から、19世紀に画学生が使っていた絵手本を紹介します。
以前このブログでも紹介した19世紀後半の代表的な絵手本集「シャルル・バルグのドローイングコース」の翻訳出版(2017年)以来、クラシカルペインティングに興味のある方々の間で、昔の絵手本の存在への関心が高まったように感じます。
アトリエラポルトでは、19世紀に使われていた絵手本の一部を所有して、受講生の参考にして頂いてます。
すべて版画で作られたもので、写真製版とは違うクリヤーな線と繊細なグラデーションが見て取れます。順次このブログで紹介したいと考えてますが、まずは最も保存状態の良いものから。
下側に線で描いたデッサン、上側に陰影をつけてボリュームを表したデッサンが描かれています。作者も制作年代も不明ですが、石版画の技法で描かれていることから19世紀の中頃に作られたものかと推測しています。
線の強弱だけで正確に形を表すことから始め、
陰影をつけることで奥行きや細部の凹凸や前後関係を表し、よりリアルしていく過程が示されています。影は塗りつぶさずにハッチングで描いているのも参考になります。
きっと当時の画学生は、このようなテキストの模写を数多くしたのではないかと思います。現代の美術教育ではこのような模写は否定されていますが、西洋のアカデミックなデッサンを考える上ではとても貴重な資料です。
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