2023年9月17日日曜日

コレクション:1800年頃に描かれたアカデミックな人体デッサン

 今回は最近購入したアカデミックな人体デッサンを紹介します。

おそらく1800年代の早い時期にフランスの美術学校かアトリエ(絵画教室としての)で描かれた作品で、当時のデッサンの規範に忠実に従って制作されてものです。


大きさは720mm×560mmで、目の詰まった木炭紙のような紙におそらく合成木炭(今のチャコール鉛筆に近いもの)で描かれています。


ただ見えたとおりに描写したデッサンではなく、当時の新古典主義の思想の影響下にギリシャ・ローマ時代の理想的な人体プロポーションに近づけて描かれています。


また、直角三角形の枠組みの中に、腕・胴体・足といった部位が直線や曲線でつながり、有機的な構造を感じるデッサンです。



美術解剖学的にも驚くほど正確で、複雑な骨や筋肉の形を繊細なハッチングで描き切っています。



19世紀後半の資料によると、当時の美術学校での人体デッサンは1日5時間で1週間が1サイクルだったようです。このデッサンは完成度からみてそれ以上の時間をかけて描いたのではないかとも思いますが、いずれにしろ固定ポーズで長時間かけて描くのが美術学校での人体デッサンの基本でした。クロッキー中心、感情表現重視の日本の人体デッサン教育に疑問を抱かせる1枚です。



2023年9月9日土曜日

三原色で描くエチュード

アトリエラポルトでは着彩の練習方法として三原色で描くことを勧めています。
発色は鈍くなりますが、明暗をベースにした色の扱い方を学ぶのに良い方法です。
 
今回は彩色油絵初挑戦のCさんの作品を紹介します、

使用絵具:
イエローオーカー、レッドオーカー、コバルトブルー、シルバーホワイト、バーントアンバー(黒の代わりと考える)
*仕上げに近ずくにつれ、少量のカドミウムイエローとカドミウムレッドを加えて彩度の落ち込みを補いました。



まずは、キャンバスと同じサイズの画用紙に鉛筆デッサンをしました。



デッサンをキャンバスに転写した後、バーントアンバーで明暗を付けた後、明部をシルバーホワイトで描き起こします。



三原色を自由に混色しながら対象の色を再現していきます。この時、油絵具の特徴とも言える透明(溶き油を多く加える)・不透明(溶き油を加えない)を使い分けると色合いの幅がより広がります。


蝋燭のある静物(F8号)


彩度の低い色調の中でボリュームと奥行きを追求した作品に仕上がりました。明暗の組み合わせなど構成に不慣れな点はありますが、油絵らしいマチエールと質感の表現が初心者と思えないほどです。これから徐々に透明度や色相の違う絵具を増やしていき、より発色の良い絵を目指していくと良いでしょう。





2023年8月28日月曜日

じっくりコツコツとデッサンの練習 2

 前回に引き続きMさんのデッサンを紹介します。


作品4
パンパローニの少女(550×410)


部分



作品5
ドクロ(410×270)


部分



作品6
ジャンヌダルク胸像(550×460)


部分


前回にを含めてMさんがアトリエラポルトで約1年半の間に描いた作品を紹介しました。
1枚1枚丁寧に描き込んだデッサンばかりです。枚数を重ねるごとに明暗が整理され、形がよりクリアになっているのが分かります。このように授業では、数を描かせるよりも遠近法や明暗法やモデリングなどについて説明しながら、納得いくまで時間をかけてデッサンに取り組んで頂いてます。


2023年8月21日月曜日

 じっくりコツコツとデッサンの練習 1

 前回紹介した「カニ」を描いたMさんが、アトリエラポルトに来てから制作したデッサンを順を追って紹介します。

すべて画用紙に鉛筆で描いています。


作品1

かぼちゃのある静物(530×460)

部分


作品2
インパラ(550×410)

部分


作品3
フレンチ少女(550×330)

部分


作品1は約10時間、2と3は30時間以上かけて仕上げてます。
まだ形の捉え方に不安定なところがありますが、丁寧な仕事ぶりを感じさせる作品です。

このようにアトリエラポルトでは、量を描くよりも1枚1枚描き方や見方を説明しながら時間をかけてじっくり制作して頂いてます。そのために固定した自分のスペースで、常に一定した光の下で描けるように工夫しています。

次回もそのような環境で描いたMさんの石膏デッサンを紹介します。


2023年8月8日火曜日

カニを描く

 今回もちょっと変わったモチーフを描いた木炭デッサンを紹介します。

作者のMさんはアトリエラポルトでデッサンを初めて2年目のOLさんです。石膏デッサンを学びながら、自分で探したモチーフのデッサンもおこなっています。カニの剥製は自ら購入したもので、それに講師がジオラマ風の台をセメントで作りました。


今回は背景も含めて現実の明暗を再現するようにしたので、次のような画材を選びました。
紙:キャンソン社 ミタント紙(グレーの中間色)
木炭:伊研 No.830(ヤナギ炭)  No.980(ミズキ炭)
チャコール鉛筆:黒 白
擦筆、練り消しゴム



モチーフにデッサンの基準となる中線をおろし、硬めの木炭(ミズキ)を使って線で形を取ることから始めました。



モチーフが白いシルエットとして浮かび上がるように暗い背景から明暗をつけていきます。
(ヤナギ木炭を使用)



大きな面は木炭で、細部はチャコール鉛筆で描き込んでいきます。
木炭を塗る時のコツは、同じ明度でも木炭を布や擦筆でこすると引っ込んで見え、こすらずに紙の凹凸の上に乗せると手前に出たように感じます。この効果を利用すると暗い領域の中での前後関係が表しやすくなります。



最後にチャコール鉛筆の白で明部の明るさとハイライトを加えて完成です。


カニ(330×240)

石膏デッサンで学んできた事が生かされた作品になったと思います。
単に対象を写真のように引き写すのではなく、明暗の組み合わせや形のボリュームの出し方を工夫をして、よりクリヤーな形態と空間を感じさせるデッサンです。
色を使った作品を楽しみにしています。


2023年7月26日水曜日

「奥深い洋画材の世界展」動画

 5月にギャラリー・エスパ・スラポルトで開催された「奥深い洋画材の世界展」のアーカイブ動画がYouTubeで公開されています。

展示された画材について主催者3人が雑談を交えて解説します。興味ある方は是非ご覧ください。




YouTubeサイト内の検索に「奥深い洋画材の世界」と入れて頂くと続編もご覧いただけます。



2023年7月19日水曜日

骨を描く

今回は鹿の頭骨を描いた作品を紹介します。

 


絵の練習用のモチーフとしてよく使われる骨は牛の頭骨ですが、アトリエラポルトでは狭いスペースでも描ける鹿の頭骨を使ってます。



本物の頭骨には石膏像にない微妙な色合いや質感の変化があり、それを描き表わすのは良い練習になります。今回チャレンジしたYさんは、アトリエラポルトの基礎カリキュラムを習熟した方で、デッサンと油絵の両方の技法で描いてみました。

画用紙に鉛筆(300×210)
制作:約3時間

部分


キャンバスペーパーに油彩(300×180)
制作:約6時間

部分


どちらも短時間で描いた腕試しのような習作ですが、アトリエラポルトで学んだ事が良く反映されている作品です。例えば、頭骨の複雑な凹凸を骨の白さを保ちながら細部まで描き表わしていますし、油絵具の透明・不透明や寒暖の扱いも的確です。この技術を画面構成と結びつけた作品制作が今後の課題だと思います。