模写を経験された方は、実感されると思いますが、途中までは、意外に簡単に似てくるのですが、仕上げに近づくにつれて、反対に実物から遠ざかっていくような感覚になるものです。
とりわけ原画に近い材料や技法で再現しようとする模写(昨年8月30日のブログを参照)では、経年変化によるニスや絵具の黄ばみを、できるだけ除いて描いていくのでなおさらです。
リアルな表現を得意とするH君も、この点は戸惑われたと思います。
とりあえず原画より僅かに明るい状態で、筆を置くことにします。原画の状態に近くするには、よく乾かした後で(1カ月以上)、仮引き用ニスに、少量のスティルドガラン(レンブラント製)を加えて、ニスの黄ばみを作ってかけると良いでしょう。
細部までよく描き込んだ完成度の高い模写になりました。
単に似ているだけではなく、寒色・暖色の変化を伴ったモデリングも適切に再現されています。
また、筆触や絵具の厚みや、透明・不透明などもよく考慮されています。
写真から絵を描く人は、多いと思いますが、絵肌まで写真のように平滑にするのは、油絵具の特徴を生かしきっているとはいえません。
例えば、アングルやブグローの絵でも、実物を近づいて見ると、驚くほどデリケートに筆触や絵具の厚みや透明度の違いを使って、表現していることが分かります。
H君も、この模写を通して実感されたのではないかと思います。
絵のサイズ:57cm×41cm |
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