右の写真は、フィレンツェの中心となる大聖堂の鐘楼です。設計者は、ジョットといわれています。
この鐘楼を離れてみると、窓の比率が上の方が大きくなっているのが分かります。
これを、大聖堂前の広場から見上げると、窓の比率が等しく見えます。
これとは反対に、例えば現代の高層ビルは、ビルの窓が上下とも等間隔で作られているので、真下に立って見上げると、パースがついて、傾いているような感覚に襲われます。
この鐘塔の設計者ジョットは、そびえ立つ鐘楼の圧迫感を弱め、鐘塔が地面から垂直に建って見えるように、窓の比率の調整をおこなったと考えられます。
このように、現実の遠近を鑑賞位置から最も効果的に見えるように修正することは、西洋では遠近法の幾何学に基づいて古くから行われています。
右の図は、1525年に出版されてた、デューラーの「測定法教則」の中のイラストです。
鑑賞者から、文字を等間隔で(同じ大きさで)見せる方法が記されています。
上記の例でみるように、実際の遠近を弱めて表現する方法を、20世紀の美術史家バルトルシャイティス(Jurgis Baltrusaitis)は、アナモルフォ―ズ(Anamorphoses,1984)という著書の中で、「緩慢な遠近法(Perspective ralentie)」と呼んでいます。
Baltrusaitis著 “ANAMORPHOSES” 1984年 |
次回は、もう一方の「強められた遠近法」について、紹介します。
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