2013年5月10日金曜日

メディチ像の石膏デッサン


右は、アトリエ ラポルトの講師が描いたデッサンです。

石膏デッサンでお馴染みの、ミケランジェロが作ったメディチ像の頭部ですが、実物がどのような状況に置かれているかを、考えながらデッサンした人は、意外に少ないのではないでしょうか?

















実物は、イタリアのフィレンツェにあるメディチ家の礼拝堂の中にあります。

写真のように、鑑賞者からかなり高い位置に置かれています。












ヴェネツィア派の画家ティントレット(1518~1594)も、メディチ像をデッサンしていますが、見上げた角度から考えて、現場で描いているのが分かります。



















西洋ではギリシャ時代から、対象が見る位置によって、どのように変化して見えるかについて、幾何学的に考えてきた歴史があります。特に、遠近法が発明されたルネサンス時代には、非常に発達して、彫刻・絵画・建築などに生かされました。


例えば、ミケランジェロの代表作であるダビデ像は、右のように正面から見ると頭が大きく見え、胴体との関係が不自然に感じますが、実際に設置されていた状況から見ると、下のように自然に見えてきます。





フィレンツェの市庁舎前(現在は模刻が置かれている)


この事から推測して、ミケランジェロは、メディチの頭部を作る時も、鑑賞地点から最も効果的で美しく見えるように、考えていたのではないでしょうか? 

石膏デッサンを、単なる受験や基礎訓練のために描くのは、味気ないものです。せっかく西洋彫刻の傑作を描くのですから、像に込められた、作者の造形上の工夫や配慮、その背後にある歴史を考えてみると、石膏像を描く意味も、また違ったものになってくると思います。




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